完全オファー制にもかかわらず、非参加の大喜利プレイヤーからも注目を浴びている大会がある。その名も「シン・大喜利サイヤ人選別 補完計画 」。
参加者からの高い満足度もさることながら、特筆すべきは練りに練られた予選から決勝までの”お題“の構成。
今回は一切妥協のない神主催者「猫皮ニャン志」さんにお題作成の極意、そして大会の”創り方”について伺おうと思う。
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猫皮ニャン志さん
お笑いを語らせたら右に出る者はいない程の知識と経験の持ち主。
完全招待制の大会「シン・大喜利サイヤ人選別 補完計画」を開催中。
お題に対して妥協はなく、
一つの大会に対して数百を超えるお題を用意する、まさに「神主催者」。
Q1.まずは自己紹介と経歴、実績、笑いに対する考え方について教えてください
GiriNewSをお読みの大喜利プレイヤーの皆さんこんにちは。猫皮ニャン志と申します。まず笑うモールス信号さん、「神主催者」って言うのやめてください、、、。このような記事を書かせていただく事になって本当に恐縮しております。経歴、実績などは本当に”そこそこ”です、色んな会場の”そこそこ”の位置によく居ます。
お笑いは本当に子どもの頃からずっと好きで、ここに書ききれない程なんですけど例えば、
ダウンタウンさんが好き→松本さんが「松紳」って番組をやってる→紳助さんが漫才コンビを解散したのは松本さんが一部理由→紳助竜助のDVDを買う
みたいな数珠つなぎな興味の連鎖で「爆笑問題の太田さんが好き」から立川談志師匠の落語を聞いたり神田伯山さんの講談を聞いたりして37年間生きてきました。
そんな色んなプロの方達の笑いに対する考え方をテレビや本、ラジオから吸収してほんの少しだけ大喜利に活かせられてるかな、、という感じで今これを書いております。
そこで得た知識なんかはこの記事の後半で紹介するんで皆さんも是非参考にしてみてください
Q2.「シン•大喜利サイヤ人選別」について、開催した理由、現在までの所感を教えてください
大喜利サイヤ人選別を語るとこれまた長くなるんですけど、これもダウンタウンの松本さんと作家の高須さんがやられていた「放送室」ってラジオの中で「お笑いサイヤ人」なる話がありまして、
この言葉をヒントに”本当に面白い人がちゃんと評価される場所“を作りたいなと思って企画し始めました。
今回で実は三回目なんですけど今回のテーマは「真ん中」だったり「調和」だったりします。今現在インターネットには色んな大喜利会場があり「”簡単”から”難しい”」「”物足りない”から”理解できない”」「”面白くない”や”面白い”」皆さん思い思いの考え方があって、時折色んな所で論争になったりしています。
僕は色んな会場で”そこそこ”の成績を残しながら「ひょっとしたらこれの真ん中が一番面白いんじゃないか」と思い、自分が今まで色んな会場で目にしてきた面白い人を各会場バランスよく集めたら
どうなるかという考え方に行きつき、64人を招待し開催したのが今回の「シン•大喜利サイヤ人選別」になります。
現在までの感想は、かなり成功に近いかなといった印象です。64人の招待制にした上で投票できるのもその64人だけにしたのは一見さんお断りのお店で味わえるような優越感と閉鎖的な空間をにすることによって周りから「なんだなんだ?何が起こってるんだ?」と思ってもらえるようにするのが狙いだったんですけど、今の所嬉しい感想、反応ばかり頂いております。
実際ボケや結果発表などの進行具合は表に出していてそんなに閉鎖的ではないんですけど、参加されてない方がこの会場のボケを目にして「このボケしびれた」や「参加したい」と言ってくださったのは本当に嬉しい体験でしたし、大会を進行しながら「うわ、なんでこの大会俺に招待来てないんだよ」と自分自身で思えるくらいボケを見ていて楽しいのがなによりです。
一年に一回は行う予定なんで皆さん縁がありましたら、よろしくお願いします。
Q3.基本的なお題の作り方について。普通お題・穴埋めお題・画像お題それぞれで重要視しているポイントはありますか?
知的には、「変」
情的には「他人のちょっとした困り」
生理的には「緊張の緩和」
社会的、道徳的には「他人の忌み嫌うこと」ないし「エロがかったこと」
いきなりすいません。これは落語家・桂枝雀師匠が「落語DE枝雀」という本で書かれた笑いが起こる法則です。緊張の緩和ぐらいは聞いた事ある方がいらっしゃると思います。よく分からない方はなんとな~く、知っていた方は「お、知ってる」ぐらいで流してください。例えば「他人の忌み嫌うこと」なんて「こんな○○は嫌だ」だもんな~とかそんな事を思ってくれたら幸いです。こんな考えがベースにあったりもします。
さて、、、お題の作り方を説明するというのはとても難しいので、自分が作ったお題を例にして心の呟きと共にそのお題が出来た経緯を説明していきたいと思います。
A.普通お題と基本的なお題の作り方
【お題】弱小ヒーローが一緒にボコボコにされた少年に一言。何と言った?
これはまずダウンタウンのごっつええ感じって番組のコントに「ミラクルエース」っていう弱々しいヒーローが子供を助けた後に変な事を言い続けるコントがあったんです。
僕はそのコントがすごい好きで「弱々しいヒーローが子供に変な事言ってるの面白いよなあ」ってのがずっとありまして、、、なんかこれを大喜利に出来ないかなあと思ったのがキッカケでしたね。
「弱々しいヒーローと子供」その発想から「助けてくれるはずのヒーローが負けたりしても面白いよなあ」などまあいろいろ妄想しまして、「助けてくれるはずのヒーローが負けたのにも関わらず偉そうな事を言ったら面白いよなあ」に行きつきました。これをゴールとしてお題にしていきます。
まず直接それを言葉にしてみます
【お題 子供を助けに来てくれた弱々しいヒーローが敵にやられて偉そうに言った一言とは?】
(子供も被害受けてた方が面白そうだな)
【お題 子供を助けに来てくれた弱々しいヒーローが一緒に敵にやられて偉そうに言った一言とは?】
(偉そうに限定しなくてもいいか、偉そうじゃなくても悲しい事とかでも面白い事起きそうだし)
【お題 子供を助けに来てくれた弱々しいヒーローが一緒に敵にやられて言った一言とは?】
(説明臭いし、ちょっと長い、短く出来る言葉、、、「弱小ヒーロー」なら?「やられて」じゃなくてもっと描ける言葉、、、「ボコボコ」。ヒーローものだと子供より「少年」かな)
【お題 弱小ヒーローが一緒にボコボコにされた少年に一言。何と言った?】
完成。だいぶ端折りましたが。まあこんな感じで自分が今まで触れた面白いものをヒントに作る作り方です。自分が今まで触れて面白いと思ったものや、実際起こった出来事を「こうなったら面白いよなあ?」と
言いながら妄想する。妄想はお題作りに一番必要な作業だと僕は思います。面白い発想が生まれたら上手く言語化していって、そこをゴールにして、ゴールまでの道のりを作り上げるイメージだと思います。
ちなみに回答をいくつか。
【お題】弱小ヒーローが一緒にボコボコにされた少年に一言。何と言った?
心配だからもう一回謝ってくるわ
(ベーつるさん)
ごめんな、住所喋って(ベーつるさん)
これ次回から使える割引券になります(謙Nigtmareさん)
普通お題はお笑いの「フリ」作りなので一番「お笑い力」みたいなもんが試されると知り合いのプロの方が仰っておりました。今でもずっと難しいですね。
B.穴埋めお題の重要視してるポイント
まずそもそも穴埋めは色んなことを自由に設定できるので、お題としての広さや狭さ、難易度も自由に変えられるしお題としては簡単に作ることができる部類に入ると思っています。
作り方も色々あるんですけど、ここで書くのは「設定」と「ボケ」、「面白い言葉」と「メモリの振り切り」について書いてきたいとおもいます。
【「設定」と「ボケ」】
穴埋めは「フリや設定」についてボケさせるものと、「落ちや起きた事」をボケさせるものと2種類作ることが可能です。ざっくり言うと前半穴埋めが「フリや設定」をボケるモノ、後半穴埋めが「落ちや起きた事」をボケるモノです。真ん中の穴埋めもありますが長くなるので割愛します
ポイント
笑いの構成は【フリ→落ち】なので穴埋めしない部分(こちらで用意する文章)は、フリ(前半)なのか落ち(後半)なのかを考えて文章をつくるとまとまりやすいです。
後半穴埋めの場合には前半でボケてない設定やフリを文章にする
例【お題 ”集団”対”集団”の関係において最も恐ろしいのは◯◯◯】
前半穴埋めは後半でボケてる文章にする
【お題 ◯◯◯場合、警察官は1発だけ発砲しても良い】
が、、、!まあここでめんどくさいのが穴埋めは「穴埋めしてください」というお題自体がフリになっていて【穴を埋めた文章全体自体がボケとなる】から逆でも全然お題として成立します。
なんで正直穴埋めのここらへんの理論はかなり僕の中でまとまっていませんし、かなりなんでもアリだと思います。まあ上手くまとめるには上のやりかたって感じですかね。
【「面白い言葉を使う事」と「メモリの振り切り」】
僕が穴埋めで重要視しているのは「面白い言葉」と「メモリの振り切り」です。
まずは「面白い言葉」、こちらは皆さんが普段耳にしているパワーワードみたいなものではなく「何かが起きそうな単語」「意味がいっぱい詰まった単語」「単語自体に何かが起こっている単語」「なんかザラザラする単語」です。
例えば【瞬間接着剤】なんて絶対悪い事しか起きないような気がしてきますし、何かが起こりそうな気しかしてきませんよね?こういう感覚です
他にも【ルーレット】【取扱説明書】【おくすり手帳】、、、こういう単語をまず考えて入れて、そこから面白い事が起こりそうな文章を作っていき、ボケて欲しい所を穴埋めにする感じです。
作ったお題と実際来た回答も紹介していきます
【お題】◯◯◯、ルーレットスタート!
父は最後まで不器用な人でした。皆様椅子にお掴まりください、ルーレットスタート!
(ペッタさん)
【お題】瞬間接着剤◯◯◯やめろ
瞬間接着剤ガール、夢がありすぎるハグやめろ
(guniguniさん)
【お題】取扱説明書を読まずに捨て続けてきた男◯◯◯
取扱説明書を読まずに捨て続けてきた男と同じ答えで、多分終わりました
(ふふふさん)
【お題】おくすり手帳◯◯◯
おくすり手帳パーティーに行って来ました!我慢、我慢の連続でした
(A味噌汁さん)
こんな感じになりました。おくすり手帳なんてそのまま使って後半穴埋めです。ちょっと自由過ぎる気もしますがそこら辺は好みで調節していきます。
「メモリの振り切り」
色んな言葉の意味や量などのメモリをMaxにした状況を作ります。枝雀師匠の言葉で言う「変」を作りだすのが「メモリの振り切り」です。よく皆さんが目にするのは「し過ぎる」だったりもしますが僕が良く使う手法としてあるのが「マスター」という言葉です。
【お題】公園マスターである彼は◯◯◯
公園マスターである彼はブランコの前に車を停める
(尊敬ラーメン屋さん)
公園マスターである彼は、公園が減ることより増えることが許せない(アガリブルさん)
マスターって言葉に薄くアホさが入っているのがやっぱ面白いですね。他にも「大量」だったり「極めた人」だったりメモリを振り切らせてお題で「変」な状況を起こす事は常に考えてはいます。これは文章お題にも言える事なのですけど。
C.画像お題で重要視しているポイント
画像お題はそれなりに有限なのでとにかく構図が被らないようにする事は意識しています。「こんな回答他でもあった」が起きないように努力はしていますが、やり尽くされているので本当に画像選びは難しいです。
なんで一番心がけている事は「とにかく時間をかけて探す事」だと思ってます。一週間かけて「映画のタイトルあいうえお順」を全て画像検索かけて画像100枚用意した辛い思い出もあります。
あと他に重要なのは【画像の中の何をボケているかが受け手に簡単に分かるもの】ですね。だから色んな所に文字が書かれていたり、動いてる人にテロップが入ってるものなどの「画像に情報量が多すぎるもの」はあまり選ばないようにはしています。
他には、まあここでも枝雀師匠の緊張と緩和は意識して選んでいます。なんとなくですけど「緊張っぽい画像」だなあ、、とか。
自分の好きな画像を紹介します。
【お題】画像で一言
間に合うけど何回謝ることになるんだ
(尊敬ラーメン屋さん)
待って、今紅葉どころじゃない
(テンカオさん)
【お題】画像で一言
さっきの「もういいです」って何
(とらきちさん)
諦める瞬間を見るのが毎年楽しみで
(とりふぐさん)
【お題】画像で一言
グラスで魚飼ってるの無理でした
(家雨さん)
無視して暗算を続けなさい
(ひざガクガクさん)
画像お題の「良い画像」は本当に見つけることが難しいので、時間をとにかくかけて探す。これが重要なポイントになってくると思います。
Q4.大会でお題を出す順番、種類分けなどするか、決勝のお題は特別なものを出すかなどありますか?
お題の並べ方や出す順番は、「同じ要素が絡んでるお題は並べないくらい」なんで多分皆さんが考えてる事以上の事はしていないと思います。
「シン•大喜利サイヤ人選別」は300用意したお題の中から、回答者が戦うお題を一つずつ選び、主催である僕が一つ選んで三お題やるシステムなんですけど、お互いが画像お題を選んだ場合は「お、お互い画像に自信があるのね。じゃあ三問目も画像にするよ。」ってな感じで三お題画像にしたことはあります。
決勝お題について考え方はコロコロ変わるんですけど、昔は工夫して変わった特別なお題を出したことがあったんです。が、今はやっぱり大喜利は受け手のものだなって思っているので、受け手がひいちゃうような分かりにくい試みはしないようにしています。と言いはしたものの「俺の大会じゃあ!」っていきり立ってまた特別なお題を出すこともあるかもしれません。
Q5.最後に何か一言お願いします!
ええ、今回はお題や企画に関することで呼んでくださったので、僕が気になる企画主さんやお題主さんを紹介して終わりたいと思います!紹介されてない人は人数制限だと思って次回に期待してください!
ええ最初の一人目はエッセンシャルダーメージアヘさん
エッセンシャルダーメージアヘさん
Twitter大喜利の祖。この人無しではTwitter大喜利は語れません。50歳付近なのにって言うと失礼かもしれませんが歳も歳なのに最近お題作りに目覚めて向上心持って僕に色々聞いてきてくれる凄いオッサン。さっつんさんと退屈な夕食さんのサポートもありでTwitter大喜利を盛り上げ続ける御仁。
さっつんさん
退屈な夕食さん
二人目はおんみょうさん
おんみょうさん
ツイキャス大喜利のエンターテイナー。演出からトーク、何から何まで凄いクレイジー野郎。あまのじゃくだからなんかやれって言ってもやらないヤツだけど、大喜利茶屋からとか最近始めた人達におんみょうさんの面白さ、ツイキャス大喜利の面白さを知って欲しいと思っている。なんかやれよ。
三人目は木曜屋さん
絡みが全くないので多分本人からしたら名前を出されるのは迷惑な話かもしれないですけど、たまに流れてくる大喜利の考察を参考にさせていただいております。ずっと気になっています。
そして、、、、、優勝は、、、、、、
、、、、、
優勝は、、、、
、、、、、
、、、、、
おおちゃん@ジャン鶴さんです!
おおちゃん@ジャン鶴さん
おおちゃん、落ちに持ってきてすいません。しかし、おおちゃんがやっているジャンボボンバイエという企画、あの回答者の紹介の時に「回答者が選んだ入場曲をつける」という発想
初めて見た時に「やられた」と思いました。あれ本当に好きなんです。パクりたいです。パクります。
以上4人を紹介しましたが、他にも気になってる人はたくさんいます。
最後になりますが、やっぱり大喜利界は【回答】が主役になることが圧倒的に多い世界です。ツボ上げはあってもお題上げみたいなのはほとんどありません。なのでお題主のはしくれとして今日は皆さんにお願いがあります。
もう少し、ほんの少しでもいいので良いお題があった時は、「これ良いお題!」と声をあげてもらえませんか?このままだとお題主は「なんだこの糞お題」と罵られるばかりで、どんどん少なくなっていってしまいます。
あと皆さんもどんどんお題主やりましょう!
ここまで読んでいただいた方々本当にありがとうございました!長文駄文何が言いたいのかさっぱりだったとこ沢山あると思いますが、全て桂枝雀の「落語DE枝雀」を読めば解決します!
笑うモールス信号さんありがとう!
わあわあいうております!お時間です!さようなら!
猫皮ニャン志さん、お忙しい中インタビューを引き受けてくださりありがとうございました!
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