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予選2回戦 グループH やる気のない葬式での魚醤さんの投票先一覧
お題
スタッフも参加者も完全にやる気のない葬式
ひふみよさんの回答
足先をヘビみたいに動かすのが流行る
3
点
魚醤
すじこさんの回答
何をやっとるんだと言われてすぐ片付けた
3
点
魚醤
かさのばさんの回答
蜂が入ってきて故人をゆっくり刺した
2
点
魚醤
べーつるさんの回答
しゃぼん玉が入ってきて中止になる
2
点
魚醤
樹上歌人さんの回答
__『R.U.R.U.(ルル)! いつでもあなたの暮らしのそばに。』
ちょうど飛ばせない秒数の広告が終わると同時に、葬儀場の駐車場に着いた。ワイアレスのイヤフォンを耳から外す。
R.U.R.U.社はロボット製造の第一線で活躍するベンチャーだった。といっても、人間そっくりに働くAIを載せたロボットで一発当てた資本で、種々の分野の一流企業の吸収・合併をくりかえして、いまではもう千人以上の社員を抱える大企業なのだが。
張富(はりとみ)という男が、R.U.R.U.の社長だった。若者がたった数人集まっているだけのオフィスを、世界に名を轟かせる巨大企業にまで成長させた手腕は、工学への深い知見だけにとどまらない。その人づきあいのよさと、爽やかな笑顔を売りにして、みんなの「トミー」として世間でタレント的な人気を得た。
かたやおれはしがないフリーター。じつは高校のときは、おれとトミーは友人どうしだった。買い食いしたり、喧嘩したりして日々を過ごした。対等な関係だったと思う。張富のことをはじめに「トミー」と呼んだのはおれだった。こんな話、いまの友人にしたところで鼻で笑われるだけだから、トミーの話題になっても口には出さないけれど。
きょう参列する葬儀の喪主もR.U.R.U.だった。社長秘書の葬儀らしい。本来は関連会社の役員である親父が参列するはずだったのだが、親父が急な疲労骨折で入院してしまったから、代理で参加することになったのだ。あそこの社長と友達だっただろ、なんて親父は言うけど、親父の十年とおれたちの十年は違う。仲がよかったのなんてずっと昔のことだ、いまとなってはもうトミーは雲の上の人間だった。
なんだか、へんな葬式だと思った。まだ式の始まる時間じゃない。それでもこの規模の葬儀だ、参列者はすでに山のようにいるのに、だれも故人の死を悼んでいる様子がない。それどころかひそひそ数人で会話しているひとたちや、談笑しているグループさえいる。
「うしなった__をロボットに__なんて、社長も趣味がわるい__」
とぎれとぎれに色々なことばが聞こえてくる。R.U.R.U.の内情はよく知らないが、いまではつきあいがないとはいえ、旧友の悪口らしきものを聞かされるのは気持ちのよいものではない。長い道を、自分の席のほうへずんずん進んでいく。
広大な式場の中ほどに、トミーはいた。おれを見てすぐにわかったらしい。意外だった。ひどく驚いた顔をしていた。むこうから声をかけてきた。
「ひさしぶり」
「ひさしぶりトミー、なんだよ、幽霊でも見たような顔して」
「__ううん、なんでもないよ、元気にしてたか?」
「そこそこな__なに、不審者じゃない。親父の代理。怪我しちゃって出られないんで、かわりに来たんだ」
そう説明しても、トミーはまだじろじろ見てくる。
「なんだよ。安物のスーツで悪いね。こちとら社長どのと違って、薄給なフリーターなもんで」
するとトミーははっとしたように、
「いや、そんなつもりじゃないんだ、ごめんな」
そう謝られて思いだす、こいつはこんなに成功者なのに、性格もたいへんよろしいのだ。
「__おれのほうこそ、ごめん」
親しい秘書を亡くしていまいちばんつらいのはトミーのはずなのだから、彼に当たるなんて無配慮だった、と反省する。
そしておれはトミーにこう耳打ちする、
「なあ、おれ、急な代理だったから、故人の顔も知らないんだ」
ぶしつけだけど、ご遺影を拝見してもいいかな? そう伝えるとトミーはなぜかにわかに慌てだして言う、
「遺影なら祭壇に__いや、その、おまえのお父上も秘書の顔は知らないはずだから、見なくても問題ない__彼はずっと社長室でおれにつきっきりだったから、この場でさえ、彼の顔を直接見たことのある人間は多くないんだ」
「祭壇か。そうは言ってもお顔も存じあげないのは失礼だから、見にいくよ__」
「いや! なんだ、彼は人見知りだったから、かえって恥ずかしがらせてしまう、かもしれない」
「なんだそれ」
心配性は変わらないな、と呟き、おれはだだっぴろい式場の、奥の祭壇へと歩きだす。するとトミーが横にぴったりついてくるじゃないか。
「じつは彼の家は黄檗宗の一派なんだ。黄檗宗には『面縁』という思想がある。顔を合わせただけで、人間と人間はこの世での結びつきを強くしてしまう。それが重なって現世への執着につながる。『面縁戒』といって、死後に赤の他人と引きあわせるのをよしとしないんだ」
こちらが小走りになると、トミーも小走りで並走する。
「嘘つけ」
おれはごまかされない。トミーは学生の時分から、いかにももっともらしいほらを吹くのが得意だった。もしそれが事実だったらいちばん最初に言えばよい話だ。それに、そもそも遺影を置かなければいい。
「『弔う』という漢字の字源を知ってるか? 『弔』の字には『弓』が含まれる。儒教の考えかたにおいて、死者はだれしも一張の弓をたずさえているとされるんだ。『弔』の縦を貫く棒は祈る人間を表す。生前に世話になった相手には、死者は現世での幸福を祈りかえす。生前に非道な扱いを受けた相手には、その弓で報いの矢を放つ。昔は殺人事件の裁判のために容疑者を遺体と対面させていた、みたいな話、聞いたことあるだろ? あれはこういう類の信仰に関わってる。生前に面識のない者が葬儀の場で遺影や遺体と対面するのは、不用意に死者に弓を引かせかねない行為として、慣習的に忌避されている。おまえがマナー違反を犯そうとしてるから、それとなく教えてやってるんだ」
「嘘つけ」
おれがフェイントで急に速度を緩めると、トミーもそれに追随する。ここまでかたくなに拒むのは、なにかやましいことがあるのではないかと勘ぐってしまう。
「__おまえは昔から、ほんとうに頑固だ! 頭のネジを締めすぎてるんじゃないか?」
そこまで言われて、頭にきた。頑固でロボットみたいなやつだ、そのくせミスばっかり。仕事ができない。協調性がない。ずっとそう言われてきた。職をいくつも転々として、そのたびに絶望した。トミーまでそうやっておれを否定するんだなと悲しくなった。そしてこう言いかえす、
「あのな、親しいひとが亡くなったんだろ! 明るくいたい気持ちはわかるけど、昔みたいな冗談ばっかり言ってる場合じゃ、ないだろ」
そのとき、トミーは柄にもなくひどく動揺したらしかった。あまりに動揺していたせいで、式の準備のために棺を運んでいるスタッフと、それなりのスピードでぶつかってしまった。これはトミーを駆りたてたおれのせいでもある__とはいえ、そんなことはもはやどうでもいい。
だって。
衝突によって開いてしまった棺。
その棺を覗くと__いや、覗くまでもない。見るからに、完全にずれてしまった蓋が覆い隠していたのは、おれだった。おれの死体だった。
R.U.R.U.社は小規模なベンチャーだった。
社長にはとても信頼していた人間がいた。
高校卒業とともにはなればなれになってしまったが、社長はずっとその友人を自分のそばに置きたがっていた。
だが、その友人は「自分にはつりあわない」などと言って、社長を避けつづけていた。
社長は思いついた。
友人が避けるならば、まったく同じ人間をもうひとり造ればいい。
社長は全霊を尽くして、その友人を完璧に再現したアンドロイドを造った。
そのアンドロイドを自分の秘書にした。
R.U.R.U.社はロボット製造の第一線で活躍するベンチャーへと急成長した。
ある日、その秘書は、暴走するトラックが社長につっこむのをかばって、重要な部位を大破し、機能を停止した。
倒れた棺はほったらかしのままで、トミーはスタッフをいちど裏に帰してから、それらすべての経緯をおれに説明した。
「ロボットの精神はつねにクラウドに同期されてるから、死んだというほどじゃないけれど__精神的な休養の期間は必要だし、このボディは修復不可能なほど破損してしまったから、こうして葬儀をひらいたわけだ」
ふーん。迷惑なやつだ。こんなに参列者のやる気がないのもしかたがない。
「でもさ、おれみたいな秘書がいたってあんまり仕事できないだろ、ヘマばっかで」
おれはちょっとした自虐を込めてそう言う。するとトミーは大きく横に首を振った。
「いいか、ちょっとした思い違いや失敗というのは、実に高度な人間の処理機構なんだ。命令されたことを確実にこなすだけのコンピュータとは違う。確率的に計算しただけで発話を決定して、平気で嘘をつくそこらのAIとも違う。我が社の最新の人工知能は、人間的にあなたの友人となり、人間的な創造を成し遂げ、人間的にちょっとしたヘマをやらかす__『R.U.R.U! いつでもあなたの暮らしのそばに。』」
トミーは自身たっぷりにそうのたまう。
「それに__その、おまえみたいにドジというか、そういうところもかわいい、だろ?」
「は?」
ふざけやがって。棺からはみ出して力なく横たわっているおれの分身が、いやでも目に入る。おれはすこし意地悪な気持ちになって、言う、
「なあこれ、R.U.R.U.を訴えたら、おれ、勝つかなあ」
肖像権なんちゃらによる精神的かんちゃらを主張しよう。そして慰謝料を元手に正式な職を探そう。
するとトミーは目を泳がせながら、
「……あー、ところで、ただいま我が社では、優秀な秘書を不運な事故でうしなったことにより秘書のポストが空席でありまして__フリーター大歓迎、ただし社長たる私の信頼できる人物に限るということで__」
なるほど。なんだかんだで抜け目のないやつ。でもこういうやつだから大企業の社長にまで上りつめたのかもしれない。
「まんじゅう」
「へ?」
「三時のおやつは洋菓子より、和菓子派なんだ」そう続ける。知ってるだろ?
ふへ、とトミーは妙な声を出した。そしてトミーはこう返す。
「了解、それで和解しよう」
ああ、それと。トミーはふと思いだしたようにつけくわえる、
「ロボットのおまえが復帰しだい、秘書は二人体制になる。労働環境の改善が見こまれるとともに、我が社の社長はつねにおまえといっしょに過ごせるので、労働効率の上昇も期待されることだろう!」
なるほど、それはそれは。こんどは口に出してこう言わねばなるまい。
「ふざけやがって!」
棺の前でトミーは笑いだす。つられておれも吹きだしてしまう。さっきの衝撃で、棺のなかのおれの首からは臓器みたいなコイルが見えている。頭からはほんとうにいくつもネジがとびだしている。最高に、最高に不謹慎なふたりだ。
あーあ。
かわいそうなおれ。勝手に理想化されて、勝手に造られて、おれの知らぬ間に死んでしまったおれ。機械じかけのおれ。また勝手に生きかえらされるおれ。ああ、でもおれはトミーがどんな人間か知ってる、トミーがどれほど優しくて聡明かを知ってる。彼の命の危機には自分だって彼をかばうだろうと分かっているから、なおさらたちが悪い。
棺のなかにおれがいて、棺のそとにもおれがいて、おれがおれを弔う。おれを弔ってくれるのは、おれと、トミーだけ。
まったく、へんな葬式だと思った。
__『R.U.R.U! いつでもあなたの暮らしのそばに。』
2
点
魚醤
ハイドラさんの回答
スタッフが思わず涙をチョロリしている
2
点
魚醤
背靄さんの回答
火葬のスイッチをみんなで探していたら外で大きい音が鳴ったのでみんなで見に行った
2
点
魚醤
まごまごさんの回答
イス6個並べて棺桶置いてる
2
点
魚醤
BBGさんの回答
高さの違うタイヤで運ばれてくる
2
点
魚醤